CROSSOVER BOOK | JUNE 2022

矢澤宏太

アスリート人生に壁が立ち塞がったならば。それは自分が成長するチャンスが訪れたと言うことだ。

CROSSOVER BOOK001

矢澤 宏太

KOTA YAZAWA

Special Interview


高校時代から速球派左腕として注目されていた矢澤宏太さん。
プロを目指し、挫折を味わう中で、
そびえ立った壁を乗り越えて、
自ら望む道を全力で駆ける心情に迫ります。

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Special Interview KOTA YAZAWA

ー 2018年10月25日の暗雲。

あの頃は、
そこまでプロの世界っていうものを
意識していなかったんですけど…

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Special Interview KOTA YAZAWA

ー 2018年10月25日、NPBドラフト会議。

その日、プロ志望届を出していた藤嶺藤沢高校3年生(当時)の矢澤宏太は、自分の指名をぼんやりと待っていた。
甲子園の出場経験もない自分が、プロのスカウトから注目されていること自体、不思議な気持ちだった。
だから、自分の名が呼ばれることなくドラフト会議が終了した時も、衝撃はなかった。

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Special Interview KOTA YAZAWA

ところが、矢澤は次第に自分が空虚になっていくのを感じ始めた。
力が入らない。漠然とでもプロの世界に進むつもりでいただけに、目標を見失ってしまったのだ。
「浮ついていた罰が当たったのかな……」
進むべき道に、進みたいと思う道に、いつの間にか巨大な壁がそびえ立っていた。自分は必要とされていなかった。ドラフト会議での指名漏れから一晩、矢澤は失意のときを過ごす。たった1日。
だが、それは途方もなく長い時間のように感じられた。

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Special Interview KOTA YAZAWA

「やっぱり自分はプロ野球選手に
なりたかったんだと気づかされて……」

今さらどうにもならないジレンマ。そんな矢澤を救ったのは、現在の師である日本体育大学野球部監督 ・古城隆利だった。彼は矢澤の指名漏れを知ると、翌朝には藤嶺藤沢高校を訪ね、そびえ立つ壁の上から手を差し伸べたのである。
古城監督とひざを突き合わせて話すうち、目の前の霧が晴れていく。
「自分を必要としてくれる人が現れたんです。大学の4年間できっちり成長して、プロに進もうって。もうやる気しか出てこなかったです」

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出会いこそ人生

見いだしてくれる人、真摯に支えてくれる人の存在なくしては、どんな素晴らしい才能も開花することはない。運命的な出会いが、矢澤のアスリート人生をつないだのである。思えば、あのころの体重は60キロそんな細い体で、プロの世界についていけるはずはなかった。それを見越していたかのように、日体大野球部では矢澤をリアル二刀流として、年単位で育成する計画を打ち出してくれた。恵まれた環境の中、矢澤は壁を乗り越えるにとどまらず、自ら望む道を全力で駆け出した。
あの壁がそびえたった翌朝、古城隆利が訪ねてこなければ……。
元祖二刀流 ・大谷翔平を育て、後に侍ジャパン監督となる栗山英樹が、台湾との強化試合(コロナ渦により中止)で幻のメンバーに、矢澤宏太の名を書くことはなかったに違いない。

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矢澤 宏太

KOTA YAZAWA

Profile


2000年8月2日生まれ、東京都都出身。
172cm、65kg。
5歳から町田リトルで野球を始める。
忠生中では町田シニアに所属し、投手兼外野手で関東大会出場。
藤嶺藤沢高では1年夏から背番号11でベンチ入りし、同秋からエース。
2年秋は三番で、中堅兼投手として神奈川大会8強。